2016年 店舗日記/案内と雑記

当サイトにお越しいただき、ありがとうございます。
ここでは、日々の出来事や思うこと、お店の予定など、思いつくままに記しています。


12/23/16 別注キーケース

特別注文のキーケース。珍しい5連の金具で仕立てました。

飾り気なしのシンプルな仕様です。使用した材料が、余計な細工を必要としない・・・・

ベージュのベビーカーフ。きめの細かさは別格です。エイジングでアイボリーブラウンに、そしてぬらりと艶かしく仕上がっていきます。手触り、手応えともに、独特の気持ち良さ、本物の皮革を楽しむことができます。

一目惚れして少し持っていたのですが、あまりに特殊な材料なので量産品には使いにくいのでしょう、入手ができなくなっていました。残念です。

艶が出過ぎないように軽く仕上げたつもりのサンプルシューズ。でもすぐに艶が出てしまう。

黒も在庫が少しだけあります。


12/8/16 浅草に行ってきました

年の瀬に急に休みにして申し訳ありませんでした。

浅草で年に2回「東京レザーフェア」なる催しがありまして、革を見に行ってきました。誂え靴に使うような高級素材を一度に見ることができる機会はそうそうありません。京都にこもっていては、素材事情についてなかなか知ることができません。

革素材の供給は、とても不安定です。今使っている素材がいつ入手できなくなるか、品質が悪くなるか、常に不安があります。せめて、靴に向く素材はチェックしておく必要を感じたわけです。靴に向く革というのも、皮革素材全体からすると小さな分野でもあって、いろいろ難しいのです。今回の浅草来訪で、気に入って使っていた素材がひとつ、入手不能になっていることを知りました。ああ、またですか。そんな感じなのです。行った甲斐があって、気になる素材が手に入りそうな様子です。京都で浦島現象している場合ではないです。

同級生のタイシューメーカーさんにうかがいました。ビスポークの一品物を作っているメゾンであり、雑誌での露出もあり、多忙の様子。無理を言ってしまいました。でも、木型の設計や削り方を見て感じて、刺激に勉強になりました。

ちゃんとしたオーダーメイド靴・・・本物ですよ(当たり前ですが)。

なかなか片付けられないそうですが、仮履きのフィッティングサンプルが無造作に放ってありました。これはこれで作品・・・かな 木型のデザインの変遷なんかも垣間見えて、実に興味深い。昼食を一緒にとりながら、情報交換、やっぱり靴談義です。良い靴を作りたい、高い意識は変わらないですね。


11/17/16 気になることが出てきたので・・・

今日は一日こんな感じで過ごしました。履きなれた靴と、最近下ろした靴と、別々で。やりたかったのは、バンプシュース紐なし靴の確認です。いろいろと想定内の問題点はありましたが、以前に同様の実験をした時よりは歩けたことが収穫です。

紐なし靴はフィッティングがシビアな上に、足に合っている期間が短いので、おすすめしにくいところがあります。木型を個別に用意しないと、ますます賞味期限が短くなる。ローファーあたりだと遊びの要素が大きいので、「ビスポークで」と提案しています。パンプスになるともう、ちょっと高額になりすぎて、心苦しいものがあります。紐靴じゃ駄目ですか、と提案するのですが、どうしてもパンプスじゃないといけない職業もあることをお客様に教えていただき、納得するところもあったので、何とかできないかの基礎実験開始です。


11/1/16 靴は道具

靴の依頼が多くなっています。ありがたいことです。工程が多いだけに、段取りが大変ですが、多忙で充実しています。

多くの足を見せていただいて痛感するのは、「靴は履いて歩くための道具である」その基本です。履いて歩ける靴を作る仕事、これが厄介なもので、既製靴で事足りるのか、手心を加えるか、木型作製が必要か、足の個性と見極めに振り回されています。

一方で、道具は使いようです。「靴は踵で履いて、靴紐はしっかり結わえる」、「姿勢良く、体重移動で歩く」、靴の中で足が遊ばないようにお伝えしています。どうぞ怪我をする前に、足に合った道具と正しい使い方を意識していただきたいものです。


10/24/16 やっぱり圧倒的、ですね

今日は月曜日。休みを利用して資材の買い出しで大阪に行ってきました。電車の中でたまたま向かいに居合わせた外国の方の靴が、ちょっと興味深かったです。外羽根の靴ですが、羽根が閉じきっていて、ベロが歪むぐらいに靴紐を締め上げている。靴の中で足が動かないように、これはこれで履き方としては間違ってないんですね、サイズが間違ってるだけで。日本暮らし、長いんでしょう。

帰りに、枚方の「靴修理かわごし」に寄ってみました。たまたま足巻きフィッティングの最中で、眺めているだけでも面白い。確かに世界で唯一の技術でしょう。川越さんの持っている技術は物作りの技術。ただ靴修理を習得しただけの人よりも、ずっと広くて深い。ピンヒール交換やトップリフト交換のような普通の仕事でも、仕上がりが全く違います。本当に大事にしている、本当に気に入っている靴を修理して履き続けるならば、彼のような誠意ある職人に依頼したいものです。真心を形にする、その腕を持つ、稀有な存在を再認識してきました。(カメラを忘れて写真が撮れなかった・・・)


9/17/16 卒業

「教室はやってないですか?」という問い合わせもよくあります。講義内容や材料の準備が難しいこと、工房が狭いことなどから、申し訳ありませんが、ちゃんとした形での教室は開いていません。

問い合わせくださった方には、ハンドソーンの底付け体験を提案させていただいています。朝から晩まで使って、計7~8日ぐらいの時間がかかります。相応の費用をお願いしています。時間的にも難易度的にもカルチャースクールのようにはいきません。教室を開きにくい最大の理由です。

先日、底付け体験に通っていた方の靴ができ上がりました。できれば週に1回ぐらいの短期間に作業する方が良いのですが、お仕事の都合もあり、1カ月に1回のペースで1年かかってしまいました。普段から靴も作っているそうですが、やはり勝手が違います。様子を見ていると、途中で見本とは違う形になってくるし、心が折れそうになってくるのが見えます。最初から綺麗に仕上げるのは難しいと分かっているのですが、思うようにいかないと悔しいものです。

毎回楽しいとは言ってました。それで、一番印象的だったのは「精度」だそうです。手製靴屋の作業って細かいですからね。作業そのものだけでなく、意識とか、姿勢とか、仕事に活かせるところが少しでもあったら良いな、と思います。

内心、よく途中で投げ出さなかったと感心していました。でき上がった靴を履いて、「うれしいです!」とひと言を添えて、それまでで一番の笑顔を見せてくれました。はい、よく頑張りました!


9/2/16 注文生産でお願いします

靴屋ではありますが、お客様には靴も鞄も財布も一緒のようで、様々な注文を受けてきました。自己研鑽の意識もあり、いろいろな型紙を作っては形にしてきました。作るのは好きですし。

好きなのは、作ることだけでなく、素材そのものも、です。素材を眺めながら「作ってみたい」と思って仕上げたのが、昨年紹介したトートバッグです。

日記を見た方から注文がありました。素材は、鹿革のスウェードと、イタリアンオイルドレザーのコンビネーションです。鹿革はちょっと面白い素材で、軽い、強い、柔らかい、と、牛革とは違う特性があります。でも、仕入れの際に気に入ったのはそこではなくて、たっぷりとした厚みと、床面の繊細で均質な柔らかい毛足。スウェード面の美しさに一目惚れして、ちょっと買いためておいたのです。

柔らかい革を使っているので、底マチも柔らかい仕立てにしています。底の四隅がツンと尖っていると、そこばかりが擦り切れてみすぼらしくなってしまうので、丸くデザインしています。

身頃のサイズは、A4ファイルが入る程度、マチ幅は10センチ強ありますから、使い勝手は良いと思います。

内張りには生地を使っています。表素材の柔らかさに合わせました。革を多用すると重くなりますし。ポケットは2カ所、ジッパー付きとジッパーなしで作りました。

ハンドルとともに、根革は手縫いして立体感を出しています。修理もしやすい作りです。

この鹿スウェードが入手できなくなっているので、受注生産のみでお願いしています。 

日本人が大好きな黒スウェードでも仕立てます。そろそろ秋ですね。


7/12/16 在庫がない場合は・・・

ありがたいことです。ちょっと前の手作り市でのことです。当工房の手縫いショルダーバッグをお求めのお客様がありました。以前に見て、気に入っていただいたらしく、声をかけていただきました。本当にありがたいことです。

ただ、手間がかかるアイテムなので、十分な在庫を用意することができません。申し訳なく思っていたところ、お客様のほうから「送っていただけますか?」と。重ねてありがたいことです。

早急に製作して、郵送させていただきました。

良質の素材、手縫いの雰囲気、他にはない製品に仕上がっている自負はありますが、それをお客様に認めていただく喜び。こういう距離感は得がたいものがあります。

中身は潔く1室で、チケット(カード)用のスリットだけは設けています。長財布が入る程度の幅に、マチ幅もそれほど大きく採らず、最低限の容積しか確保していません。だからこそ表現できた、シンプルで爽やかな雰囲気。

靴以外の小物としては、よく作りました。お客様の年齢層の広さ、男女比半々というのが、この鞄の普遍的な魅力を物語っていると思います。


6/28/16 靴も作ってます

「靴も作るんですか?」手作り市に行くとよく尋ねられます。出店で靴は売りにくいので、小物が中心になりますから、仕方ないです。作れるものは作る、作れるものを増やす、そういう姿勢でやってきましたから、いつの間にやら革細工屋になってしまっています。

もちろん靴も作っています。先日は注文が重なって、オックスフォード三連発という偶然がありました。仕様が三者三様だったのが面白かったです。


6/15/16 梅雨の中休みに手作り市

今日は照ったりパラついたりのなか、露店の手作り市にいました。この時期にわざわざお出かけになる方々と察するに、意識の高いお客様が多く、愉快な出展となりました。革が好きというお客様、大事に使いたくなるようなアイテムをお求めのお客様、そういう方々に、自分の作る物を見ていただき、認めていただき、良い感想をいただき、作家冥利に尽きるというものです。


5/25/16 少し落ち着いてきました

冬から春にかけて、難物やら仕事にならない仕事やらに負われていました。

感情の起伏の激しい毎日を送りながら、更新する気にはとてもなれずにいましたが、ようやく少し落ち着いて仕事ができるようになりました。この期間に注文くださいましたお客様、順番に鋭意製作中ですので、もう少々お待ちくださいませ。

ご婦人用のパターンオーダーが続けて2足ということもありました。しかも似たような悩みを持った足の方が別口で。AウィズとBウィズをベースに修正を入れて・・・細い足に合わせた靴は探してもなかなか見つかるものではありません。足を見て、量産品で間に合わないと感じたら、最大限で何とかしたいと思います。


4/15/16 天国に思いをはせて

本日は百万遍の手作り市、当店の小物をお買い上げくださった方々、製品に対するご意見をくださった皆様に感謝いたします。また、当店の前で足を止めてくださる方も多く、きっと他にはない「何か」を感じてくださったものと解釈し、今後の励みにしたいと思います。

今日は、遠方からいらした元製甲師の方に、作りについてお褒めの言葉をいただきました。職人間では「他人の仕事は上手く見える」という定説があります。それを差し引いても、年季の入った大先輩に認めていただいたことは大変嬉しいものです。

その方は、製甲の経験を活かして、今でも革小物を仕立てていらっしゃるそうで、私物の作品を見せていただきました。そのステッチワークの素晴らしさ・・・ 糸目の雰囲気、安定感、運針のスムーズさ、靴特有の難易度の高いダブルステッチ、「他人の仕事は上手く見える」を差し引いても、見事な仕事でした。今の私と私のミシンに同じレベルの仕事ができるか・・・久しぶりに高い基本技術に触れ、心の底から感動しました。

かつては、国内の製甲師による高い職人技が、既製靴にも当たり前に注がれていたのです。現在では主流の海外生産の製甲では望むべくもない、天国がそこにはあったのですね。まだまだ努力できる高みがある。そう思えただけで、ノコノコ出掛ける価値があったというものです。


3/5/16 春は別れの季節・・・

包丁は砥いで砥いで小さくなると、よく切れるようになります。小回りが利いて使いやすいこともあります。でも、さすがに研ぎにくくなってきたので、お別れすることにしました。お世話になりました。ありがとうございました。


2/15/16 手作り市にて思ったこと

本日、百万遍の手作り市に出展しました。お買い上げくださったお客様、お話に付き合ってくださったお客様、その他たくさんの出会いに感謝します。

私のブースの前でじっと品物を見ている方には、積極的に声をかけるように心掛けています。品物に魅力を感じた方、革に関心がある方、品物の出来を探る方、革細工そのものに興味がある方、いろいろな意思を聞くことができるので、とても参考になります。多いのは、やはり特定の小物を探している方です。中でも条件が厳しい方が時折いらっしゃいます。「○○を入れるケース」とか「○○な財布」とか、探しても見つからないような、量販品としては難しい類の小物です。

そういう場合には、オーダーメイドをお薦めしています。探し回る時間や手間を考えると、ずっと安く手に入ります。手作り市のように作家が集まる場では、作品を見比べ、材料を見比べ、技術を見比べ、見積もりを比べることができます。昨今では忘れ去られてしまった作家物を仕立てる醍醐味を、気軽に楽しむことができます。作家と一緒になって、自分のためだけの物を作れば、納得いや満足感は大きいでしょう。作家はそういう声に応えるために、日々腕を磨くのです。