2011年 店舗日記/案内と雑記

当サイトにお越しいただき、ありがとうございます。
ここでは、日々の出来事や思うこと、お店の予定など、思いつくままに記しています。


12/30/11 2011年の総括

年を経ると、1年が短く感じるそうですが、今年はとても長かったです。

何といっても「出会い」です。外に出る機会を持つことで多くの意見をいただきました。また、工房を訪ね来るお客様にも、お金のやり取り以外の「!」をいただくことが多く、私からも「!!」を持って帰っていただきたいと、ますます強く思うようになりました。

靴については、木型切削、型紙、縫製、掬い縫いに出し縫い、仕上げ、各工程で基本の見直しをして、ブーツやノルウィージャン・ウェルテッドをはじめとして新規のスタイルを形にしてみたり、努めてレベルアップを図った1年でした。こうなると、過去のサンプルの不出来が気になるのですが、来年以降の課題としておきましょう。

靴以外の小物も増えました。小物には小物の難しさがあって、苦戦しながらも楽しんでいます。試し作りの要素が強いので、ウェブ上ではあまり紹介しなかったのですが、プラスαなオーダーをいただくこともあり、お客様と対面しての製作・販売の醍醐味を認識しています。

振り返ると、お客様に恵まれたことがやはり一番印象深いですね。本当にありがたいことです。


12/29/11 仕事納め

越年したくない仕事を片付け、ちょっとだけ念入りに掃除して、本日は仕事納めでした。

新年は、1月6日からの営業となります。連絡は随時受けられるようにしています。ちょっと長めのお休みをいただきますが、休みなりの仕事をこなしていると、あっという間に終わってしまうと思います。

掃除していて気付いたのですが、今年最後のミシンは赤い糸でした。いろいろ派手な1年だったのかもしれません。


12/28/11 珍しく、磨く

ちょっとした仕事の合間に靴磨き。ヒマなわけではなく、ちょっとした小物のサンプルを作ってから、お客様の靴を仕上げていて思いついただけです。普段はそこまでしないのですが、寒くなるとワックスの乗りが良くなるので、ついポリッシュまでしてしまいました。


12/7/11 職人魂て・・・

何となく様子がおかしいので、何気なく修理屋かわごしさんのHPをのぞいてみてびっくり。宣伝ありがとうございます、なんですが、職人魂て・・・ これじゃあ工房にふらっと行ったら、頑固オヤジに「何か用か」と一瞥くらうような、そんな古典的職人像が浮かびそうです。そんなことはないと思いますが、たぶん。私ゃ魂よりも技術がほしい。

最近は、諸々の小物の問い合わせ、注文が増えてます。靴は年内納品が不可能な頃ですが、小物なら間に合う場合があります。気になる場合はお早めにどうぞ。


12/1/11 革ジャンの脇

普段、靴や革小物を作っているわけですが、その延長でいろいろな依頼を受けることがあります。今回、ご近所様に「できないか?」と頼まれたのが、革ジャンパーの脇のほつれ直し。

見た瞬間に「できそう!」と思い、工房に預かりました。仕事終わりに時間を見つけてチョイチョイと。

縫い閉じました。革の傷みもなく、ほつれている所を縫うだけでしたから、私にもできました。畑違いではありますが、いざやってみて改めて痛感しました。修理の世界ってすごいですね。人間にとっての医者のようなものですからね。


11/30/11 立った!

チャンを擦り込まれて強くなった麻糸は立つ! 手製靴作り初期段階のちょっとしたパフォーマンス。


11/29/11 チャンを炊こう!

今日の作業を終えると、明日の予定を考えます。縫うぞ、と意気込んだところで、「あ、チャン」。チャンというのは、縫い糸に擦り込む松やにのことです。ここのところ冷え込んだりしたので、前に作ったチャンが風邪をひいてる(使えない状態になっている)だろうとは思っていましたが、案の定・・・でした。劣化しているわけではないので、炊き直します。

炊いて、サラダ油を混ぜて、硬さを調節します。今回は少なめです。このあと、冷やして固形にして使います。チャンを「まとめる」なんて表現しますが、こんな感じです。

水の中に熱い松やにを流し込む! 細かい飛沫が飛び散って、熱っ、熱っ、熱っ、熱っ! これを熱いうちに手で丸めるのですが、さすがに画像にできません。気温で硬さが変わるので、こまめにチャンは炊かなければいけません。地味に大事な下ごしらえです。


11/28/11 本気の休日 のはずが・・・

今日は予定のない全くの休み。久しぶりに肩の力が抜けて、朝から型紙を作ってました。で、どうしても気になることがあって、ついつい工房へ。ちょっと作業して、気分すっきり明日の仕事の準備完了!

午後からまとまった時間ができたところで、さあ何しよう。そこで、なぜか、思い立って枚方の修理屋かわごしさんへ。技術指導を受けに! とか殊勝な心がけではなく、完全に遊びに行った感じです。川越さんにはそれなりに気に入っていただけたのか、正直に甘い言葉、辛い言葉を下さるので、会うとちょうど良い昂りと緊張感がもらえます。仕事の上で、ここのところ起伏が激しかったので、気持ちを整理して、謙虚さを取り戻して、明日からの作業へより強い意欲が、よし! 湧いてきました。ただ、今度は「休むときは休め」を実践したいと思います。


11/12/11 秋晴れの朝

ここのところ多忙の上に、デザインに煮詰まっているアイテムもあったりで、多少疲れ気味。そこで、開店前に付近の散歩を少々。思えば、昔馴染みの地域だけにあまり散策していなかったことを思い出し、ちょっと歩くだけでも新鮮な景に恵まれるものです。ちょっとの時間でリフレッシュ! 気持ちよい朝のひと時でした。

緩やかな流れにたゆたうエビモ。水槽で育たないんだよね・・・
三十石舟。船着場の龍馬さんとおりょうさんの像が最新の名勝
カワニナも集まって日向ぼっこです。
魚が現れました! ブルーギル・・・ 外来種か・・・・・
今日は暖かいね。
十石舟がやってきました!

11/3/11 文化の日

今日は文化の日です。というわけで、朝から文化的(?)に中底加工をしました。前日に木型に合わせてクセ付けしておいたので、包丁をよく砥いだら、中底を切り回すところから始めます。

いざ切り回し! 朝一番に砥いだ包丁が気持ちいい!

甲+中底+本底というのが靴の基本構造です。製作の基本手順としては、甲を中底に接合し、さらに本底を接合することになります。中に入る足や外部から受ける力を、中底だけではなく甲革でも受け止めるセミモノコック構造であり、そこに消耗部品である本底を付属する形式と見ることもできます。今の自動車と同じような形、に見えてしまうのは考えすぎでしょうか。

ニベ(床面のモロモロ)をそぎ落とします。

自動車の場合は、乗員の移動手段だけでなく、社会的な要件が大量に関わってくる非常に複雑な機械です。それに比べると、靴は「足」こそがその形をほぼ決定付けてしまう、見た目にシンプルな道具です。ただし、自動車よりもはるかに厳しい条件がひとつあります。それは「屈曲」。歩行の度に、靴は折り曲げられることになります。

中底の出来上がり! 集中していて途中は撮り忘れ!

そのために必要なのが、適切な材料と適切な構造・・・・特に、全体重が直接かかる中底が頑丈かつしなやかでなければ、靴の働きは半減します。そして、曲げを受け止める接合方法でなければ靴は崩壊する。そういう宿命を負っています。

中底ができたら芯材のクセ付けです。

中底加工は靴の要・・・・底付けの始まりであり、靴の運命を担っている作業なのです。作業中にそんなことばかり考えているかというと・・・・考えてます。それはハンドソーン・ウェルテッド製法が現存する要因のひとつだからです。

あとはアッパーを待つばかり。というか、自分で作るんだが・・・・

工程のひとつひとつに意味がある。その意識が乏しくなると、仕上がりに表れてしまいます。自分の怠惰に負けないように。靴作りに謙虚に向き合うために。


10/31/11 浅草に行ってきました

年に1度ぐらいは・・・と思っているのが浅草行。急きょ思い立って、仕入れ半分、様子見半分、情報収集半分、顔つなぎ半分、気晴らし半分で、足すと目的満載になってしまうことに気付かぬまま、早起きして新幹線に飛び乗りました。


浅草駅からの風景が変わっている!

仕入先のほとんどに顔を出して、今の浅草界隈の革産業のお話をうかがいながら・・・まあ、春の地震の話やらちょっとした笑い話やらを交えながら、一日中歩き回ってきました。最後の締めくくりには、母校たるギルドへ。本日は休業日だったのですが、高野浩司、角田健太郎両講師に話し相手になっていただき、とても充実した機会になりました。本気の靴談義、革談義ができる場所は、本当にありがたいです。

夕暮れに銀座のネオンが眩しい。

夕方6時になると、浅草の業者さんは大抵閉店しますから、少し寄り道をして夜の銀座に足を運んでみたりして。

目的地は大きなクリップのお店です。
結局は大荷物!

今日はあまり買い物をしないつもりだったのが、新幹線に乗り込んでみると意外な大荷物が足元に。帰宅して荷物を整頓すると、それでも、小さな買い忘れに気付きます。それはさておき、新しい材料も入手したことだし、明日からまた、張り切っていきましょう。


10/18/11 香りに惹かれて

一般に月曜日は平日ですが、私には多忙な休日になります。私事と仕事に忙殺された後の休み明け、ここで気が重くならず、心機一転! で取り掛かれるのは「好きなことをやっている」からです。今日やることを確認しながら、少し入れ込みながらの出勤時、濠川沿いで、不意に秋の花の香りが漂ってきました。ギンモクセイ(銀木犀)です。金じゃなくて銀。その奥ゆかしさに思わずニンマリ。気負っていたのをたしなめられました。


10/5/11 落ち着きます

よく砥いだ包丁でおにぎり型の革をペラペラに漉く・・・メダリオンの裏張り。破らないように集中して作業していると、心が澄んできて逆に落ち着いてきます。


9/15/11 ベヴェルウェストは特別?

ベヴェルウェストの仕様は、通常仕上げとは中底から違うので、釣り込んではチェック、掬い縫いしてはチェックしてしまい、ついつい慎重になってしまっている自分に最近気付きました。ベヴェルウェストのクライマックスは出し縫い。ここまで来ると積み上げ、仕上げに向けて前向きに突き進めることができます。現金なものです。


9/13/11 お登勢の手作り市に出ます

次の日曜日9月18日に、竜馬通り商店街の「お登勢の手作り市」があります。都合でしばらく出ていなかったのですが、久しぶりに参加します。工房は不在になりますので、ご注意くださいませ。ただし、雨天の場合は工房にて通常営業します。

また、17日の土曜日は休業しますが、月曜日祝日の19日は工房を開けます。

画像はフレンチカーフのキーケース(¥6,000)。多少値は張りますが、靴に使う革なので、やたら頑丈です。こういうちょっとした小物を、少量ですが用意しています。目立つ色から売れるのが悩みどころかもしれません。


9/8/11 ノルウィージャンウェルテッドの迫力

迫力の仕様でありながら、正面から見るとずいぶんまとまって見える。木型との相性。


9/1/11 はじめました

当初思ったよりも問い合わせが多いため、ブーツをはじめました。いろいろ考えすぎて、サンプル作製が遅くなってしまいました。まずは、定番の外羽根で。


8/23/11 じゃ~ん

ボリュームを持たせた細くて長いスクエアトゥで久しぶりに靴を仕立てたら、ちょっとした下心が湧いてきた・・・というところでお盆休みをいただきました。ゆっくりすることは全くない、充実した休みでした。

ということで、形にしたものを。

ノルウィージャン・ウェルテッド製法によるハーフミッドソール仕様です。いろいろ作ってみて、この3番木型とハーフミッドソールとの相性は良いと認識していました。ただ、ノルウィージャン・ウェルテッドの迫力まで飲み込めるか不安だったのですが、全くの取り越し苦労でした。

予定調和ではありますが、それにしても、この面一感! 重厚感は当然ですが、せり上がったウェルトの分だけ爪先が薄く、スマートに見えます。ノルウィージャン・ウェルテッド製法については、登山靴とか防水性とかいろいろ言われますが、実用性はハイテク素材のハイテク構造に分があります。ですから、こういう仕様はあくまでも「スタイル」。狙った以上の雰囲気に仕上がり、少々ときめいています。


8/11/11 手縫い靴

「手製靴」というふれこみで表に出ていると、意外に多いのが、「これも手縫いですか?」と甲革を指差されることです。さすがに30番のナイロン糸を1.5mm弱のピッチで手縫いするのというのは無理なので、製甲はミシン仕事が中心です。

でも、あまりにも手縫い手縫い言われると、つい手縫いしてみたくなって、デザインはどうしよう、木型は既製(パターンオーダー用)でいいから特徴的な3番木型はどうだろう、と具体的に考えるようになってしまって、合間を縫って、ついつい、

こんな靴を作ってみました。人気の内羽根S字バンプの手縫い仕様です。太い糸で縫ってみたのですが、思ったほどの迫力は出なかったものの、端整にまとまった雰囲気に仕上がりました。普段から出し縫いを手縫いしているせいか、普通の平縫いが想像以上に整ったものと解釈しています。ともあれ1度は作ってみたので、発展性を模索してみようと思います。

久しぶりに、少しボリュームを持たせた長めで細めのスクエアトゥの木型を使ってみたのですが、その爪先形状を眺めていると、今までに二の足を踏んでいた仕様で、ちょっと1足作ってみたい下心が湧いてきたりして・・・・


7/23/11 暑い、熱い、厚い

京都の夏は暑いです。で、節電、意識しますね。製作工程で使う電気モノといえば、製甲でのミシンと漉き機、それから仕上げの際の電気コンロぐらいのものですから、節電する余地は少ないです。

今日はその仕上げ工程でした。コンロの前に陣取り、熱したコテで底材に蝋を溶かし込み、余分な蝋を拭き取る。蝋が足りないのも困るのですが、逆についぽってり厚く乗ったりすると、拭き取りが大変です。灼熱の仕上げが終わると、気分的には出来上がり、です。汗を拭き拭き夜遅くまでやってたので、疲労と少しの達成感でついつい工房で座ったまんまうたた寝(初めて!)してしまいました。

写真は先日撮った出し縫いの様子です。更新されなかった写真と本日の撮り忘れの抱き合わせ、です。


7/12/11 予想外の展開

今日のテーマは「釣って、釣って、また釣って」でした。特に無理な足数でもないし、ゆったり始めていったところ、途中で何か手が遅いと気になりました。改めて冷静に考えると、全部釣り込みが違うことが判明。無意識に慎重になっていたのでした。暑さに重ねて、変に力も入っていたようで、作業が終わってからグッタリ。いつの間にやら発生したマメも気になるし、せっかく作業は上手くいったのに、いま一つ充実感に乏しい一日になってしまいました。


7/6/11 スポーティ?

パーフォレーションやメダリオンの穴がポコポコ開いた、いわゆるブローグシューズを「スポーティ」と評することがありますが、スニーカーやスパイクシューズも存在する時代ですから、いま一つ釈然としません。ただ、穴飾りを1つ1つ丁寧に開けた後に積もったポンチかすを見ていると、この作業そのものには妙なスポーツ性を感じます。


7/1/11 やってみよう!

以前から、機会があればやってみようと思っていた仕様があります。材料はずいぶん前に入手していましたが、他にやりたいことがあって延び延びになっていたことを思い出しました。時間はそんなにかからないだろうし、一念発起! あと必要なのは、被験者たる靴・・・・

目が合いましたね。過酷な使命を全うして退役するバッファローレザーのチャッカーブーツ1号に代わって、梅雨明けに履き下ろそうと目論んでいたバッファローカーフチャッカー2号。室内で試し履きした痕が、甲の微妙なしわに残っています。

今度は大事に履きたいと思っていたのですが、このテの靴は実用として活躍してくれることもあって、ついつい実験台になってしまいます。それでは、紐をはずして、木型を突っ込んで・・・ いざ、半貼り! 見様見真似シモダ・スペシャル!

貼ったった。というか、パクったった。こんな感じ、かな。
[シモダ・スペシャル]は、あの高名な靴修理店ユニオンワークスにおいて、お客様が持ち込まれた修理例を元に確立された、ハーフラバーソールの貼り方です。普通に貼ればよかったのですが、知ってしまったからにはトライせずにはいられませんでした。実用逆さ半カラス仕上げ? とにかく直線が残る貼り方よりも、雰囲気が断然いいですね。こういう技を公表して、「同じ仕事なら美しく」の姿勢を示してくださるユニオンワークスさんに、尊敬の意を表するとともに、心より感謝いたします。


6/28/11 「釣り」みたいでごめんなさい

「靴・かばんその他修理かわごし」さんに写真入りで紹介していただきました。ありがとうございます。生地の靴ですが、商品としてはまだまだ実験中です。履いて回ってダメ出しをしている最中に撮影されました。見映えは本当に良いんですが、耐久性に難あり(屈曲部のホツレ)で、実用化にいたっておりません。もう少し、現実的な形はないものかと検討を重ねています。生地屋から「無理!」と言われているのですが、諦めきれないのです・・・・

通常の革での作製は常時大歓迎です。お気軽にお問い合わせくださいませ。


6/26/11 夢のようなひと時

あれはいつの頃だったか、もはや定かではない。

偶然行き着いたHPに目を奪われた。毎日更新されるブログに心躍らせた。
「うわっ」「ひえ~」とPCの前で実際に声に何度出てしまったことか。

もう何年もそのHPに通い続けた。私は転居を繰り返し、何の巡りあわせか、そのウェブマスターの近くに居住することになった。

意識していなかった、ある思いがポッと湧いた。
「会ってみたい」

これって、もしかして・・・・

用もなく押しかけるわけにもいかない。が、想いは募る、募る。

ついに、こらえきれず、アポもなく電車に飛び乗っていた。

車中、ドキドキが止まらない。

これって、やっぱり・・・・

最寄り駅に到着~

ここからは歩いてすぐ。

胸の鼓動は激しくなり、目の前が白くなり、汗が噴き出す。

この感情は・・・・・恐怖!

恐怖!恐怖!恐怖!

私が会いに行くのは、鬼! 修理の鬼!

うぅぅ、頭の中でダースベーダーのテーマが流れているぅ。

鬼が島~

知る人ぞ知る、靴・かばんその他修理かわごしさんです。

私   「こんちわ~」

川越さん「こんちわ~ あっ」

閑話休題・・・・

川越さん「コーヒー淹れますね」

これが名物。絶品。

「毎日、更新!」にあこがれ続けて幾星霜。先週、私物の修理をお願いしたので、それを取りに行きました。作る技術と修理する技術は全く別物です。[靴・かばんその他修理かわごし]の川越一之さんは、私が持っていない、持ち得ない、大きく深い技術の引き出しを持つ人物です。気さくな川越さんは、初対面の私にも、技術を含めていろいろなお話をしてくださいました。私は理論が先に立つ“頭でっかち”ですから、川越さんの実践を伴った話(というか技術指導?)に「うわ~」を連発していたに違いありません。特に印象的だったのは、作業の際の身のこなし、鋭い眼光、まさに虎! 修理の虎! そう、ここは何人もの修理職人を育てた、まさに“虎の穴”。今日もその仕事ぶりに目を奪われ、御厚意に甘えてついつい長居してしまいました。申し訳ありません。そして、ありがとうございました。

それにしても、夢のような時間でした・・・


6/23/11 一気に底付け?

掬います。

掬って・・・・

出して・・・・

ほい!

あ、ほい!

ほほいの・・・・・

ほい!!

で、出来上がり! あとは仕上げ!!
みたいにできれば良いのですが、実際はそう簡単ではないのです・・・・


6/21/11 ループ

作業の合間にふと思い出して、ループを作製。革を適当に切り出して、漉いて、裁断して、ナイロンテープ入れて折り込んで、ミシンがけ。時間はかかりませんが、いかんせん小さい。腕時計のバンドのループですから。接着のループだと、汗をかいて解けてしまい、最悪の場合バックルがはずれて時計を落とすことがあります。これからの季節、気をつけましょう。

それにしても、今日は朝から変に入れ込んでいたのに、こんなことを思い出す余裕がよくあったなあ。


6/19/11 桑の実

桑の実狩りに行ってきました。わが家の年中行事のひとつです。野良桑の雌木を目指して京都府北部へ。蒸し暑いし、土曜日に患った左目のものもらいがストレスだし、汗ダラダラの一日になってしまいましたが、相手は生き物で待ってくれませんから無理は通さなければいけません。夜半までジャム作ってました。無理した以上に、疲労以上に得るものが大きいので、どうにもやめられません。


6/11/11 折り返し

釣り込んでから余分な革を切り回して眺める。型紙作製から始めると、気分的にはここが折り返し地点。工程的にもちょっと一息つくところ。


6/5/11 スキンステッチ

こういう技術もたまに実践しておく。練習だけでなく、形に残す緊張感を持って。


6/3/11 う~ん

木型を削って、先芯をクセづけしてなお「何か違う表現はないか?」と模索している。


5/17/11 ご近所さま

15日竜馬通り商店街の「お登勢の手作り市」に出店しました。この日は「葵祭り+百万遍の手作り市+陽気」で客足は鈍かったものの、近所の方に声をかけていただいたり、なかなか有意義でした。

露店の難しさはあるものの、人の目にさらされることの重要性は常々痛感します。さまざまな意見をくださった皆様に感謝したく思います。


5/10/11 今月も出ます

次の日曜日15日にも、竜馬通り商店街の「お登勢の手作り市」に参加します。天気が良さそうですし、新しい出会いを楽しみにしています。その代わり、次の月・火曜日は工房をお休みします。


5/2/11 ヒカゲツツジ

あまり目的意識もなくブラブラしたくて、府下の山地に出掛けてきました。そろそろ家に帰ろうかと思った頃合に満開のヒカゲツツジに遭遇しました。花好きながら樹は苦手なのですが、この花は別格に大好きです。豪華なホンシャクナゲ系に対して、花の色、花の形、枝葉の雰囲気、樹姿・・・この繊細なシャクナゲは、冴えたそれでいて柔らかい、月光のイメージを持ち合わせています。思えば野生の姿を目の当たりにしたのは初めてでした。感激しながらも癒されました。明日からまた頑張ろう!


4/19/11 お登勢の手作り市

ご近所の竜馬通り商店街で月に1度開催される「お登勢の手作り市」に3月と4月に参加しました。靴はサイズ展開があって販売しにくいですから、定期入れだのポシェットだのを少し仕立てての出展です。露天には似つかわしくない価格設定になってしまうので、販売というよりも近隣への広報活動が主目的です。それでも、工房から出て行くと多くの意見や感想を聞くことができるので、とても有意義です。靴に関心がある人も思ったよりいらっしゃるようで、話し出したら随分時間が経ってしまうようなこともしばしばでした。

そろそろ閉店の雰囲気が流れ出す頃、大柄な外国の方が目の前に立っていました。私はイングリッシュがとってもプアなので、話しかけられたらどうしようと思っていました。果たして、目が合い、きっちり歩み寄ってきました。「お前は何をメインに作ってるんだ」「靴だ」とか、やさしい英語と貧相な英語で2、3会話を交わすと、彼は展示していた靴を手に取りました。持ち替え持ち替えしながら、3Dに靴を眺め回しました。向こうの方は本当に作りを見ます。日本人とは異なる、また、職人とも異なる靴の見方に触れるのは、新鮮な経験です。おもむろに、
「どこで靴作りを学んだ?」「浅草だ。日本では浅草が靴作りの中心なんだ」
「これもお前が作ったんだよな?」「そうだ、フルハンドだ」
で、
「Mmm… Excellent!」
落ち着いて「Thank you」とは返せましたが、心中は全く逆。「Good」じゃなくて「Excellent」。こんな言葉は全く想定外でしたから、本気で励みになりました。


4/14/11 ひまわり色の

ここのところ、このページに靴が登場しないとの指摘を受けましたので・・・・

黄茶コンビのクォーターブローグダービーです。実は外羽根のテコ入れをしたくて、セミブローグダービーのリデザインを試みていました。ストレートチップのフォーマル感と外羽根のカジュアル感のミスマッチからか、なかなか人気のないデザインですが、双方の良い所取りと思えば汎用性は高いです。今回は、タンニンなめしのオイルドレザーを使って派手めに仕立ててみました。外羽根コンビなのにメダリオンなしで、しかもベヴェルウェストと、カジュアル/フォーマルしっちゃかめっちゃかの仕様ですが、それは、私が履こうかな、と目論んでいたからです。履いて、陽に焼けると、相当に雰囲気が出そうです。とりあえず、しばらくは工房に置いています。

履いてしまうとサンプルがなくなってしまうので、サイズ違いでセミブローグダービーも作ってみました。

こちらは「足が地に付いた感」のあるいい雰囲気が出てくれました。デュプイのボックスカーフは仕上げ映えがしますし、ポリッシュしながら「こっちが良かったかな・・・・」とか浮気心も湧いたりしたのですが、それをあらかじめ抑えるための「サイズ違い」なのでした。最近、新規に靴を作って自分で履きたい気分が強くなっています。元は靴好きですし、作るようになってからは、もっと靴が好きになっていますから。


4/12/11 違いが分かる男の・・・

底付けで「ちょっと削る」「銀面を剥く」「形を整える」など、さまざまに活躍するのがガラスです。ガラスの割った部分はよく切れる。1ミリ程度の厚さのガラスを弧を描くように割ると、包丁では扱いにくいビミョーな仕事をこなす、素晴らしい刃物になります。作業内容に応じて、その曲率や刃渡りを調整できるのも、いかにもアナログで職人的です。靴1足を作るのに葉書1枚ぐらいのガラスを使うと言われますが、実際に作業していてもそのぐらいだと思います。小さく割って使いますから、量としては大したものではありません。

ガラスの刃そのものは脆いです。作り置きすると、刃同士が当たり、刃こぼれを起こして全く使い物になりません。なので、作業の度に新鮮なガラス片を割り、使い捨てにします。ガラスはゴミ箱にポイポイ捨てるわけにもいかないので、とりあえずガラス瓶に集めておくようにしています。最近、ガラス片がコーヒーの瓶いっぱいになりました。靴を作った軌跡です。感謝を込めつつ、これにてまとめて廃棄です。


4/4/11 暖かな春を感じながら

そろそろこの辺りでも桜の花が咲き始め、日当たり次第ではカエデの芽もふくらんで、昼間は春めいた雰囲気に満ちてきました。昨年は猛暑の夏の印象が深く残っていますが、その前に、春が来なくて一気に夏に突入した年でした。不安定こそが春ですが、今年は温和な春であってほしいと思います。

最近は、技術的には基礎の見直しを心掛けていて、意外なブレークスルーがあったりします。一方で、「構想三年、手直し二年、未だ納得できず」みたいな型紙もあり、いい加減にまとめないと次に進めない危機感が起こったりもします。やりたいこと、やってみたいこと、やっておきたいこと、が次々に湧いてきて一向に減らないのは、物を作る者としては幸せなことだと思っています。


3/21/11 地震に際して

大地震に被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げるとともに、一日も早い復興を願って止みません。発生から10日以上が経過し、ようやく更新する気分になりました。その間、地球のエネルギーに恐れおののき、人のエネルギーに感動させられ、日本のエネルギー需給を憂う、そういう日々を送っていました。生きているからには前向きに、そう再認識されました。


2/18/11 春の気配

今日は何となく暖かく、照ったり時雨れたりで、春の気配が感じられました。不意に梅が見たくなったりしました。梅林とか植栽じゃなくて、野梅(やばい)を、です。以前住んでいた近所の山にあったのですが、まだちょっと早い気もするし、記憶が曖昧でいけません。そういう時分になると、いろいろ脳が活性化するようで、新規のデザインサンプルやお試しで作ってみたい仕様が次々に湧き出して、しばらくは手が空いたら縫製の期間になりそうです。楽しみです。

写真は近所で見つけたてんこ盛りのヤドリギです。中書島近辺は、京阪電鉄の車窓からも見られるぐらい、ヤドリギが多いです。それにしても、これだけ密集しているのを初めて目にしたときは、驚きのあまり自転車で転びそうになりました。


2/12/11 結局・・・

修正を入れました。納得。満足。グズグズ考えながら、最終的にはやる! 昔からの癖みたいなものです。だったらさっさと動けばいいのですが、経験上、どう手を入れるかのイメージトレーニングの時間を重視しているところもありまして。ええ、精神衛生上もよろしくはないとは分かっているのですが・・・ 


2/11/11 臨時休業

最近仕上げた靴で心にひっかかるところが一部あり、悩み中。雰囲気的には悪くないけれど、技術的には納得いかない、微妙な板ばさみにあっています。修正して後悔するか、修正しないで後悔するか、それとも・・・・ 一晩考えて、結局、手を入れる積極策に収まるような気がします。一足入魂ですから。

2月16日(水曜日)、都合により臨時休業いたします。


2/2/11 パリへ

夕方、完全に油断した頃に、ギルドのスタッフさんから電話があり、「出荷しました」とのこと。半分忘れていて、つい?!です。母校の母体であるギルド・オブ・クラフツが、来週、パリで展示会を開催します。それに先立ち、昨年の秋ごろに「出品しませんか」とお誘いを受けました。ギルドの積極性に感服するとともに、せっかくの機会なので、参加を決めました。ギルドにて作品の審査を受けて、出品を許可されて、手元に戻ってきた作品を年末年始に仕上げし直して、ギルドに再度送って、「あとはよろしくお願いします」の状態のうえ、自分自身は行かないので、ついつい、です。つまりは、私の作った靴もフランス・パリに向かった、という連絡だったのです。私の作品はさておき、とにかく展示会が盛り上がることを願って、ちょっとテンションが上がっています。


1/15/11 ひらめき

新年早々、型紙を大量に作ったり、木型を削り込んだりしていると、次に来るのが縫製です。以前に作ったには作ったけれど、無理があることが分かっている型紙に挑戦! と意気込みながら、昨晩は遅くまで打開策が見つからず、あまり眠れないまま工房へ。そして、準備をして、裁断して、漉き加工をしてから革を眺めていると・・・「あ~っ! ここ使える!」。そうしたらもう、鼻歌まじりに一気に出来上がり! ブラッシュアップは少し必要と思いますが、3年越しの課題をほぼクリアして、大満足です。これでデザインの幅が少し広がりそうです。あ、すみません、写真はナシ(撮り忘れ)です。


1/11/11 相棒

靴作りの相棒、ミシンです。手製靴とは言いますが、製甲はミシンが主役です。靴用としてはよく知られる18(じゅうはち)ミシンというタイプで、セイコー製TF-5という古い機種になります。学生時代に中古で購入しました。

実は、学生時代に割り当てられた機種がTF-5で、その踏み味の重さというか、トルク感が気に入っていました。他の機種が”カッチャン・カッチャン・・・”と小気味よく運針するのに対して、この機種は”トスン・トスン・・・”と針の落とし方に重量感があって、好みに合ったのです。ただし、貸し出しミシンには問題があって、運針の出足が非常に悪く、踏みにくくて、毎年割り当てられる人から嫌われていたのです。しかも、上手い人には分かりにくい程度の難だったので、そのまま改善されることもなく、ミシン初心者の私は2年間苦労しました。そこで、このミシン購入の最大の動機は、偶然にも「貸し出しミシンと同じ難がある」というところでした。つまり、あのミシンの問題点はどこか調べたくなったのです。在学中は時間に余裕もなく、騙し騙し使っていましたが、卒業後にいじくり倒して原因を見つけ、壊してしまうことも覚悟して強引な方法で修理、というか一か八かの無理をして・・・今では気持ちよく踏めるようになりました。貸し出しミシンのおかげで製甲に苦手意識があったのですが、その意識が今でも残っているおかげで、緊張感を持ちながら楽しく踏めるようになりました。ときどき調子が悪くなったりしますが、それは私の調整不足であって、ミシンのことを何も知らなかった頃を思えば、改善は楽勝です。苦労させられたけれど、その分だけ気の置けない、大事な相棒なのです。


1/7/11 バチィィィィィィン

やる気満々の休み明け、今日は朝から2足木型から抜こうと思ったら、いきなりバチィィィィィィン。同業者さんには分かるけれど、の、木型抜きのピンです。鋼鉄製なので、派手に割れるものです。こういうときはまず靴本体の心配をしますが、今回のはビスポークのお試しだったので、その点はホッと一安心でした。ヒールを小さく作ることが多いので、ビスポーク靴では特にあり得るんですね。何年ぶりだろう、以前はどの木型でやったっけ、などと思いながら、予備が手元にないことは分かっていたので、朝一番から予定変更の憂き目に遭いました。


1/3/11 謹賀新年

明けましておめでとうございます。1年の初め、心機一転、希望を抱いてコト始め。の前に、前年の反省です。工房を設けたことはもちろん、お客様に恵まれたことももちろん、技術的にもいくつかの「!」があって、充実していました。結構良い年でした。今年も毎日を、ひと作業を大事にしていきたいです。

今日は自宅でゴソゴソしていたところ、背中がピシッ・・・・ やってもうた。はい、ギックリ腰です。久しぶりなのでちょっと堪えてます。数年に1度の恒例事項なので慌てることはありませんし、程度も軽いですし、仕事に支障をきたすことはないでしょう。前途多難? いやいや、こういう時こそ無性に仕事したくなるものですし、慎重になるので丁寧な仕事ができたりするんですよ、これが。